エイジアン・コミュニティ連合旧正月祝賀会盛況、日系社会がホスト

明日に向かって本当の平等社会を作ろう

アジア系コミュニティ連合の旧正月祝賀会で、熱気を呼び団結を示した、シカゴの阿波踊りグループ「美湖連」

 「Together for a Brighter Tomorrow(共に明るい未来へ)」をテーマに、アジア系コミュニティが連携を深める恒例行事「エイジアン・アメリカン・コーリション・シカゴ(AACC)第41回旧正月祝賀会」が2月10日、オークブルックにあるDrury Laneで開催された。今年は10年ぶりに日系コミュニティがホスト役を担い、近年にない盛り上がりを見せた。

 午後4時半に始まったレセプションでは、シカゴ日系評議会、定住者会(Japanese American Service Committee)、シカゴ日系人歴史協会、US-Japan カウンシル、日本文化会館、シカゴ日本人会、シカゴ市民協会(JACL Chicago)、シカゴ-大阪姉妹都市委員会、シカゴ二世ポスト1183部隊など殆どの日系・日本団体がテーブルを出し、各々の活動を紹介する一方、日本やアジア系の美術品を並べたサイレント・オークションやパスポート・ラッフルの販売が行われた。

 会場では華やかな着物姿の女性達が彩を添え、賑わうレセプション会場に現れたシカゴ沖縄県人会の獅子舞が喝采を浴びた。

 午後6時から始まる祝賀会ディナー会場では、沖縄県人会によるエイサーの踊りが入場者を迎え、4頭の同県人会の獅子舞が会場を練り歩き「The Year of Dragon」を祝った。

 80テーブルを予定していた祝賀会は予想をはるかに越え、熱気を帯びた会場には900人に迫るアジア系コミュニティの人々が一堂に会した。

  今年の祝賀会のホスト役を務めた日系コミュニティは、昨年よりホスト企画委員会を組織し、シカゴ日系評議会の吉池学会長を委員会会長に、AACC理事会のカレン・カネモト共同委員長、アンナ・ニノユ共同委員長、ミーガン・ナカノAACCプレジデントなどを中心に、20人の実行委員が準備を進めて来た。

 

AACC理事官プレジデントのミーガン・ナカノ氏

 黒留袖に身を包んだAACCプレジデントのミーガン・ナカノ氏は挨拶で、「AACC理事会はアジア系の10コミュニティから成っており、アジア系各々の文化紹介や、模範となるコミュニティ・リーダー達の表彰などを一堂に会して行うために、毎年持ち回りでホスト役を務めている」と話し、このAACC連合の場をアジア系の市民参加を呼び掛けるプラットフォーとすると共に、選出された政治家たちとの関係を育むフォーラムの提供の場として重要な役割を担っていると述べた。

 また、今年のテーマである「共に明るい未来へ」は、統計的に無視されがちな小コミュニティにも注意を向けさせることや、米国の中で最も成長しているアジア系の存在を知らしめる意味を持つと語った。

 

 挨拶に立った柳淳在シカゴ総領事は、数年前にベトナムのハノイに3年半の間駐在していたと話し、「アジアの人々がどんなに旧正月のお祝いを楽しんでいるか良く知っています」と会場に語り掛けた。そして、「今夕は参集したアジア系コミュニティが多様性と結束、そして調和を示す大きな機会であり、皆さんは既にそうされて来たと思います」と会場に呼び掛けた。

柳淳総領事

 また柳総領事は今年の祝賀会のホスト役を務めた日系コミュニティに敬意を表し、「日系コミュニティは祝賀会を成功させるために、総領事館を含め日本コミュニティと親密に準備を進め、今までになく日本/日系コミュニティが親密になれたことを嬉しく思います」と語った。

 柳氏は今年のテーマ「共に明るい未来へ」に触れ、「アジア系コミュニティの人々は豊かなルーツと文化を持ち、米国にアジア系の顕著な貢献を知らしめている事を誇りに思います。受賞者の皆さんやご出席の皆さんの、アジア系コミュニティを越えた貢献を達成しておられる事にお祝いを申し上げます」と挨拶を結んだ。

 

J.B. プリツカー州知事

 J.B. プリツカー州知事はビデオでメッセージを寄せ、「2024年はドラゴンの年であり、幸運と繁栄を表し、明るい未来のために共に努力する完璧なシンボルだ」と祝賀の言葉を述べた。

 プリツカー氏は「私が州知事になった時、イリノイ州を居住地として、また家族を育む地として最高の州にしようと思った」と話し、「我々は共に、多くを達成した。財政責任や州政府を復活し、教育と経済開発に歴史的な投資を行い、劣化した社会福祉を元に戻した。頑迷な偏見を打ち砕き、コミュニティ間に架け橋を築いた」と述べた。

 そして、「ここに集まった皆さんは多くの文化や伝統を示し、シカゴアジア系アメリカ人連合に受け継がれる伝統を誇りに思う」と語った。

 また、ホスト役を務めた日系コミュニティに感謝の意を示し、「アジア系アメリカ人コミュニティを纏める皆さんの努力は我々の州を強化し、皆さんと共に明るい未来に進み続けることを楽しみにしている」と述べた。

 

 シカゴ日系評議会の吉池学議長はAACC祝賀会の冊子に掲載した挨拶の中で、今年のテーマ「共に明るい未来へ」とは、日本語で言う「絆」を意味し、それは「人と人との揺るぎない繋がり」を意味すると述べた。

 そして「個々のコミュニティと、より大きなアジア系コミュニティと共に、総ての人達にとって明るい未来のために、一緒に歩みたいと願う」とAACCの発展を祈念した。

 

 また、JCCCの庄野晃彦会頭は、同冊子の中でJCCCとJCCC基金について紹介し、①会員へのサービス、②教育支援、③コミュニティ貢献というJCCCの三大ミッションのうち、AACCは③に関連すると述べた。

 庄野氏は、シカゴを含む全米都市でアジア系アメリカ人に対する偏見が広がる近年の社会状況に触れ、「このような憎しみに満ちた行為や態度を撲滅しようと全力を傾ける人々を、我々は総出で支援に立ち上がらなければならない。そして、我々一人一人が倫理に叶う、人々に対して親切な態度で接する『生きた手本』とならなければならない」と述べた。

 そして、今年のテーマの「共に明るい未来へ」が我々に示唆しているのは、「アジア系がアメリカ市民の中で、真に維持可能な『平等』を掴むために、我々すべてのアジア系アメリカ人コミュニティの団体や組織がこの障害を打開する必要がある。そして、新しいレガシーを我々の次世代に伝えなければならない。JCCCとJCCC基金はこのゴールが実現するまで、他組織と共にこのゴールの追求にコミットしている」とアジア系コミュニティにメッセージを送った。

  夕食が一段落した会場では、シカゴ琴グループによる箏と尺八のデュオが静かに奏でられた。

 その後軽快な笛と三味線と太鼓のリズムに乗って、美湖連のダンサー達が阿波踊りを踊りながらテーブル席の間を練り歩き、舞台に上がった。美湖連の女性たちの華やかな衣装と踊りが客席の視線を集め、男性ダンサーたちのアクロバティックな踊りに歓声が上がり、会場は熱気に包まれた。

 熱気冷めやらぬ会場では、各々のアジア系コミュニティで顕著な貢献を続けて来た功労者と、優秀な学業成績を維持しながらコミュニティ貢献にも積極的に参加している青年たちの表彰式が始まった。

 模範となるコミュニティ功労者には吉池学シカゴ日系評議会会長より、優秀な青年達には柳典花総領事夫人より表彰状と楯が手渡された。

 今年は日本・日系コミュニティから、三谷哲郎氏(シカゴ日本商工会議所事務局長)が模範となるコミュニティ・サービス賞を、クリストファー・テツオ・ナカネさん(エヴァンストン・タウンシップ高校)がユース優秀賞を受賞した。

 

模範となるコミュニティ・サービス賞

三谷哲郎氏

吉池学シカゴ日系評議会会長から「模範となるコミュニティ・サービス賞」を手渡される、三谷哲郎JCCC事務局長

 三谷哲郎氏は鳥取県出身。大学卒業後、三谷氏は日系三世の女性と日本で結婚し、折しも米国建国200年祭の1976年、最初の夫人の生まれ故郷のハワイに移住した。

 夫人の家族や親せきを通して、三谷氏はハワイの日系アメリカ人のストーリーを聴き、その歴史に感銘し、興味を持った。

 三谷氏は一年半をハワイで過ごし、アラスカ州アンカレッジに移り、そこで日本航空の空港セクションでキャリアをスタートした。1981年にシカゴに転勤となり、一年後には日本人旅客に対する営業のアカウント・エグゼクティブに抜擢された。そして、多くの日系人と知り合う事になった。

 三谷氏は2010年に日本航空を引退し、シカゴ日本商工会議所(JCCC)の事務局長に就任した。JCCCやシカゴ日系評議会の仕事を通じ、日本祭りや日本/日系合同ピクニックなどの主要イベントにおいて、日系人と日本人社会を繋ぐ役割を果たして来た。

 また三谷氏は新一世として、日本と米国間の友好親善促進の架け橋となる事を人生の目標に掲げ、シカゴの日系社会と協力しながらその実現に尽力して来た。

 

ユース優秀賞

クリストファー・テツオ・ナカネさん

柳典花総領事夫人より「ユース優秀賞」を手渡される、クリストファー・テツオ・ナカネさん

 クリストファー・テツオ・ナカネさん(17)はエヴァンストン・タウンシップ高校の最上級生で、4点満点評価で3.99ポイントという好成績を維持して来た。中根さんは一般授業時間を超えて、生理学、解剖学、医療用語を含む医療関係学科や、身体構造上の健康科学を学び修得した。これに加え、心肺蘇生法の資格を取得している。

 ナカネさんは高校時代の早期、COVID-19のパンデミックによりコミュニティ貢献活動はできなかったが、2023年のコミュニティ・ピクニックにボランティアとして参加し、機器の積み下ろしやテントの組立、テーブルやいすの設置などの力仕事を手伝い、終了後はこれらの道具を元の場所に戻すまで片づけを手伝った。

 日本人と日系人が集まる大きなピクニックに初めて参加したナカネさんは、自分自身が日系社会に属することや日系人と同族であるという自己認識を初めて感じたという。そして、その経験を楽しみ、今後はより日系社会に関わりたいと思ったという。

 ナカネさんはその後、日系人歴史協会の資料の分類や資料の確認、保存などにボランティアとして尽力している。また、同歴史協会の受信メールの蓄積やメール発信の手伝いも積極的に行っている。ボランティアの他、中根さんはサイクリングや水泳、カヌーなどのスポーツで余暇を楽しんでいる。

 

2024年AACC旧正月祝賀準備委員会メンバー

Megan Nakano

Manabu Yoshiike

Karen Kanemoto

Anna Ninoyu

Ron Yoshino

Lisa Sakai

Michael Tanimura

Felix Lanier

Kristi Nishimura

Sue Christensen

Tonko Doi

Sadruddin Noorani

Ross Harano

Judy Tanaka

Cary Wong

Jean Mishima

Jenn Trautvetter

Eric Langowski

Joan Ambo

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