溝渕将史新総領事着任、歓迎レセプションを開催
日系史に身近な溝渕氏の背景に、コミュニティの親近感広がる
シカゴ日系人評議会(CJAC)のロバート・ハシモト議長(右)より「シカゴ日系百年史」の贈呈を受ける、溝渕将史在シカゴ日本国総領事
溝渕将史在シカゴ日本国総領事が5月10日に着任し、歓迎レセプションがシカゴ日系人評議会(CJAC - Chicago Japanese American Council)の主催で5月15日に開催された。会場となったシカゴ定住者会(Japanese American Service Committee)にはCJAC傘下の日本・日系団体のメンバー150人が出席し、溝渕新総領事を歓迎した。
着任した溝渕将史総領事を歓迎する日本・日系コミュニティ-のメンバー。(写真提供: lacorporatephoto.com)
初めに、司会を務めたシカゴ定住者会会長のステイシー・ウチダ・ブラウン氏が、溝渕将史総領事の略歴を次の通り紹介した。溝渕氏はシカゴ着任以前に5回の米国赴任経験を持ち、シカゴで6回目となる。また、国際会議の運営にも豊富な経験を持つ。
・1988年、慶應義塾大学法学部卒業、同年に外務省入省。
・1991-1993年、在アメリカ合衆国日本国大使館に勤務。
・1999-2002 年にかけて、内閣総理大臣秘書官付として、小渕恵三、森喜朗、小泉純一郎の各総理大臣に仕える。
・2002-2005年、在ロサンジェルス日本国総領事館に勤務。
・2007-2011年、国際連合日本政府代表部に勤務。
・2012-2014 年、外務省総合外交政策局にて外交政策調整官として、アフリカ、中南米、ならびに開発協力や気候変動などの地球規模課題に関する政策を幅広く担当。
・2016 年、 G7 伊勢志摩サミットで事務局総括次長を務める。
・2016-2020年、在ニューヨーク日本国総領事館で首席領事兼政務部長を務める。この間、2019 年 にはG20 大阪サミットで副事務局長を務める。
・2020-2022年、在米日本国大使館で公使参事官兼広報文化センター所長を務める。
・2023 年、G7 広島サミットで副事務局長を務める。
・2025年、在シカゴ日本国総領事。着任前は外務省で国際報道官を務める。
溝渕将史総領事挨拶
溝渕将史在シカゴ日本国総領事
挨拶に立った溝渕総領事は、心のこもった歓迎レセプションを開いてくれたCJACのメンバーや日系コミュニティの方々、および会場を提供してくれたシカゴ定住者会に礼を述べ、多くの著名人を輩出している偉大な都市シカゴに住み仕事に就く事を名誉に思うと話した。
溝渕氏は16年以上に亘って米国の西海岸と東海岸に住み仕事に就いて来たが、中西部は初めて。「だが、シカゴが特別な土地である事は既に分かっている。特に際立つのは日系組織団体と、シカゴ日本商工会議所、シカゴ日本人会、シカゴ日米協会などの日本関係の団体が一つの傘の下で協力し合っていること。この様なコラボレーションはシカゴ特有なものだ。山田重夫駐米大使や他の外交官たちも、このシカゴモデルを称賛していると聞いており、我らのシカゴ日系コミュニティ一同が誇れるものだ」と語った。
また、溝渕総領事は総領事館のメインとなるミッションについて述べた。それは日本国民と日本企業のサポート、及び日米関係の強化であり、その達成のためにはミッドウエストにおいて日本をより良く知ってもらい、より理解を深めてもらう事が極めて重要だと述べた。その上で溝渕氏は「日本・日系コミュニティは比較的小さいので、皆が共に活動することが必須となる。総領事館は日本人とアメリカの友人達、そして日本と地域社会との強力な関係構築を大切にする人々をサポートして行く。だからこそCJACの役割が重要だ」と語った。
そして、溝渕総領事は自らの日系コミュニティとの繋がりについて語った。溝渕氏の大叔母(母方の祖父の姉)は15歳の時に、溝渕氏の故郷でもある広島からホノルルへ渡り、その後サンフランシスコに移住した。それは第一次世界大戦以前の事だった。広島で既に知り合いだった男性と結婚し家庭を築いた大叔母は、第二次世界大戦中に家族と共にジェローム日系人収容所に送られ、その後トゥールレイクに移された。
慶応大学在学中の1985年にスタンフォード大学に留学した溝渕氏は、その大叔母と叔母に幾度か会い、直接話を聞くことができた。それから時が流れ、大叔母もその子供達も亡くなったが、2023年にサンフランシスコで開催されたAPECサミットの機会に、大叔母の孫娘で溝渕氏のいとこにあたるジョイさんに会う事ができた。大叔母と一緒に会って以来、38年ぶりの再会だったという。
そして今、溝渕総領事はミッドウェストにいる。この地で多くの新しい友人を作り、より多くの事を日系コミュニティから学びたいと話す。
在シカゴ総領事館の管轄は中西部の10州に及ぶ。溝渕氏によると、同管轄地内には約1,500社の日系企業が進出し、15万の雇用を創出している。また、管轄地には70を超える日本との州県・姉妹都市提携があり、7つの日米協会があり、多くの組織が日本語教育や文化活動に献身しているという。
溝渕氏は「総領事として、日米間の重要な繋がりの支援と強化にベストを尽くしたい」と語った。
ロバート・ハシモトCJAC議長挨拶
ロバート・ハシモトCJAC議長
CJAC議長のロバート・ハシモト氏は溝渕総領事を歓迎し、シカゴにはカブスやホワイトソックス、多様なシカゴスタイルピザなど注目すべき重要なものがあるが、反目する多民族や、様々に異なるコミュニティがある。その中で珍しく一体化しているものの一つが日系コミュニティであり、CJACだと話す。
CJACの傘下には、ビジネス、商工会、社会福祉、墓地管理、人権保護、歴史保存、アート、文化紹介など日本人・日系人により運営されている12の非営利団体がある。「それらの団体の共通点は日本の伝統だ」とハシモト氏は語る。
日本人と日系人がより理解を深め親密になるためのプログラム「Mirrored Lives」もマイケル・タニムラ氏と菅野早苗領事(現在は在デンバー総領事館領事)のリーダーシップにより今年1月に発足した。これは第二次世界大戦後の日本人の経験と、シカゴに定住した日系人コミュニティの様子を語り合うもので、第二次世界大戦で分断された両者が互いの経験を知り合う貴重な機会となった。
この他CJAC傘下の団体により、様々なイベントが開催されている。毎年2月にはシカゴ地域のアジア系コミュニティの約1000人が集う「アジア連盟ルナー正月祝賀会」が開催され、2024年は日系コミュニティがホスト役を担い、大成功を収めた。
また、2月には日系人強制収容を可能にしたルーズベルト大統領による大統領命9066を忘れないための式典が行われる。5月のメモリアルデーにはモントローズ墓地で、先人や戦没者の功績に敬意を表すメモリアルサービスが行われる。夏には森林保護地域で日本・日系合同ピクニックが開催され、楽しい一日を提供している。
そして、7月19日にはシカゴ日系コミュニティの一大イベント、ジャパン・フェスティバルがスコーキーで開催される。昨年はシカゴ市のミレニアムパークで開催され、大成功を収めた。ハシモト氏は今年の成功を目指し、各団体の結束を呼び掛けた。
Chicago Japanese American Council傘下の12団体は:
・Chicago Japanese American Historical Society (CJAHS)
・Chicago Japanese Club (CJC)
・Chicago Nisei Post 1183 American Legion
・Japanese Buddhist Federation
・Heiwa Terrace
・Japanese American Citizens League – Chicago Chapter (JACL)
・Japanese American Service Committee (JASC)
・Japanese Chamber of Commerce & Industry of Chicago (JCCC)
・Japanese Cultural Center (JCC)
・Japanese Mutual Aid Society of Chicago
・US-Japan Council Midwest
・Japan America Society of Chicago