使命を終える月探査ロボット宇宙機LADEE
アポロ宇宙飛行士が見た「朝焼け」の解明も
日本語メインに戻る
  NASAの月の探査ロボット宇宙機LADEE(Lunar Atmosphere and Dust Environment Explorer)が予定された科学調査を終え、月面に衝突させられることになった。
LADEEは現在月面から2から3キロという超低高度で月を周回しており、月の大気のデータを地球を送り続けているが、4月21日に燃料が尽きる。4月15日には月が地球の陰にすっぽりと入る月食が4時間続き、その間を無事やり過ごしたとしても21前に月面に落下することもあり得る。

 月の重力場は一律ではなく、クレーターのエッジから谷底まで地形の変化が激しいため、NASAではLADEEの推進装置を使い巧妙な軌道修正を続けている。11日には最後の軌道修正を実施する。燃料が尽きれば自然に高度が下がり月面に衝突するが、NASAでも正確な衝突時間や場所は限定できない。NASAでは一般市民から衝突時間を公募し、11日に締め切る。衝突場所はいずれにしても月の裏側で、地球から衝突を見ることはできない。今まで調査したり着陸した場所は避けるとしている。

 近年まで月には大気がないというのが一般説だったが、月面に太陽が昇る前に朝焼けがあることがアポロの宇宙飛行士達により報告されていた。インドの月探査機チャンドラー1号が2010年に6億トンと推定される氷の存在を突き止め、その前後の研究でも薄い大気があることが裏付けられた。
アポロ17号でも月面レベルの調査が行われ、微量のヘリウム、アルゴン、アンモニア、メタン、二酸化炭素、ネオンの可能性のある物質が検出された。
一方、地上から特殊な望遠鏡を使った観測も行われ、月の大気には地球・金星・火星の大気にはないナトリウムやカリウムが存在することがわかった。
月の大気は非常に薄い。NASAによると、地球では海抜レベルで1立方センチ当たり10,000,000,000,000,000,000個の分子があるが、月の大気には1兆分の1の1,000,000個しかない。この密度は400km上空を宇宙ステーションが飛んでいる地球の大気の縁と同じレベルだという。

 月の大気の成分がどの様に作られたのかは分かっていない。NASAによると、太陽風と月面物質の化学反応、月面からの蒸発、彗星や隕石による物質、月の内部からの噴出などが考えられるという。
NASAではルナー・リコナサンスなど複数の偵察衛星を月の周回軌道に乗せており、氷の存在や月の土に水の分子が含まれていることを突き止めている。月面の水の循環に大気がカギとなる役割を果たしているのではないかと考えられている。

 地球と月の大気の決定的な違いは、分子の動きだという。密度が濃い地球では大気中の分子同士がぶつかり合って動くのが大半となっている。一方希薄な月の大気中では原子や分子がぶつかり合うことはなく、電弧に沿って流動している。
このようなタイプの大気は「surface boundary exosphere」と呼ばれ、水星、大型の小惑星、他の惑星の衛星、海王星軌道外側のカイパー・ベルトにある天体にも共通すると見られている。このようなタイプの大気を知るためにも、月の大気を詳しく調べるLADEEに大きな期待がかかっている。

 LADEEは昨年9月6日にバージニア州のワロップス島から打ち上げられ、10月6日に月の周回軌道に入った。その後、目的の高度を周回する軌道修正が行われ、11月20日に赤道周回軌道に入った。
LADEEの高度は20から50キロメートル、もっとも離れた時には75から150キロメートル。月を4時間で周回するため、2時間おきに昼と夜が入れ替わる。計画された100日の調査期間内に70万を超える観測データを地球に送ってきた。月面に衝突するまでデータを送り続ける。

 LADEEはラジオ通信よりも6倍速いオプティカル・レイザー・コミュニケーションにも成功している。 また、LADEEはスター・トラッカー・カメラを搭載しており、星の位置によって自分の正確な位置を把握するシステムを取っている。今年の2月8日には1分おきに撮影した5枚の写真を送ってきた。一連の写真には月の北西部にあるクレーターが写っている。NASAが公開しているLADEEの写真は、この5枚だけ。

 4月3日に行われたLADEEの月面衝突に関するNASAのテレ・カンファランスはwww.nasa.gov/newsaudioで公開される予定。

Moon Facts

*地球から月までの距離は最大で約40万5,000㎞、最短で約36万㎞。最短時に時速70マイルの自動車で行くとすると、135日かかる。
月は地球から毎年3.8㎝ずつ遠ざかっている。地球を公転する速度は秒速約1.02㎞。

*月の直径は約3,475㎞。表面積はアフリカ大陸とほぼ同じ。最大のクレーターの直径は約2,500㎞。赤道下の気温は昼間で摂氏134度、夜は摂氏マイナス153度。重力は地球の6分の1。月の1日(日の出から日の出)は地球の29.5日。

*宇宙飛行士が持ち帰った最も古い月の石は45億年前のもの。アポロ計画で持ち帰った月の石は382㎏。

*もし、地球の周りを月が回っていなかったら地球の自転は3倍速く、1日は8時間だった。
(NASAのプレスキットより)

NASA提供
LADEEが撮影した月面の写真(NASA提供)