Chicago Shimpo
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シーファー元大使講演:
「リーダーシップが要求する義務と犠牲は、それでも平和と繁栄を生み出すことができる」

• 破滅的な対立の歴史から約71年、より良い未来を建設することは容易ではないが、日米両国はそれを実現した。それは、日米協会のような組織が共に歩むことを育て続けて来たからだと、ジョン・トーマス・シーファー元大使はシカゴ日米協会86周年記念夕食会で講演を始めた。

• かつて加藤良三駐米大使が「日米同盟は美しい庭園のようなものだが、継続的な手入れが必要だ」と言っていた。今日はその手入れについて話すが、その前にアメリカの歴史に触れたいとシーファー大使は述べた。要点は外交政策と貿易。

• 米国は独立後、フランス革命との関わりを避け、参戦を回避していた。1914年に第一次世界大戦が勃発するまで米国はニュートラルな立場を取っていたが、参戦を決めた。

• 参戦の現実はすぐに米国に伝わった。たった一日の午後で何十万もの米国の若者が命を落とした。フランスも英国もそれぞれ数百万人の若者を失い、経済的にも枯渇した。米国の同盟国に対する巨額の借款は回収できそうにもなく、参戦への苦い思いから米国は孤立主義に戻った。

• 孤立主義、保護貿易主義を訴えて1928年の選挙に勝利したハーバート・フーバー大統領は1930年にSmoot-Hawley Tariff法を施行し、米国の雇用と輸出品を守るために関税を大幅に引き上げた。これにより世界で貿易戦争が始まり、すでに深まっていた大恐慌を複雑化させた。1934年には世界貿易が4年前の66%までに縮小した。
• 米国は第二次世界大戦に参戦、これを通して米国は、孤立主義は自国にも世界にも悲惨な結果をもたらし、孤立主義に戻ってはならないという結論に達した。

• 「もし世界に平和が欲しければ、世界の一部でなければならない。国際秩序を欲するならば、民主主義、人権保護、自由市場を欲するならば、国際法を支持するならば、我々がリードしなければならない。70年以上に亘って、それがアメリカの外交政策のエッセンスとなっている」とシーファー大使は語る。
• しかし、その実行には犠牲を伴った。国民の説得も容易ではなかった。それでも世界は1945年当時よりも相当に良くなった。
• そして今、2016年大統領選の候補らがアメリカの基本的な外交政策に疑問を投げかけているとシーファー大使は憂慮する。

• 米国の戦後の成功の一つの柱となったのは貿易だった。米国の雇用の5つに1つは貿易と関係している。
• 1966年、米国が貿易で得た利益は500億ドルだった。現在は4兆ドルに拡大している。古人の言葉に「商人が国境を越える時、兵士は越えない」があるという。

• 米国はかつての保護貿易主義が世界平和を乱したことを知っており、民主党・共和党共に貿易の自由化を支持して来た。第二次世界大戦後はマーシャル・プランを実行し、ヨーロッパの経済復興を図った。米国は日本と西ドイツに貿易を推進し、戦後の復興と平和促進のための薬とした。こういった米国の外交政策は成功した。
• 現在日本は世界第3位、ドイツは第4位の経済大国となっており、アジア、ヨーロッパの平和の礎石として認識されている。また、世界のモデル国となっている。

• シーファー大使は、戦後から変わっていないことが一つあると指摘する。よく知らない人や国を容易に悪者扱いする事だという。これを乗り越えるには非常な努力と時間がかかるとシーファー大使は話した。

• アメリカ人の仕事が貿易によって海外に取られているとよく言われるが、事実なのか。海外企業との競争に負けて雇用を失っているのは間違いないが、技術革新によって多くの仕事が失われているのも確かだ。
• 1980年代には日米間で貿易摩擦があった。特に日本車の輸入額は大きかった。しかし、今ではトヨタ自動車の75%は米国で製造されている。貿易によって多くの雇用が創出されているという人は非常に少ないが、「ポイントは日本企業がアメリカで高収入の仕事を創出しているということだ」とシーファー大使は語る。

• 貿易交渉は非常に厳しいが「何かを得るためには、何かをあきらめなければならない。貿易協定は双方に多くの良いことを生み出している。保護貿易政策ではできないことだ」とシーファー大使は語る。
• TPPは大統領候補が反対しており、連邦議会での通過は疑わしくなっている。しかし、TPPは世界経済の40%を占め、アジアと西半球に相当な利益を世代に亘ってもたらす。例えば日本はすでに米国の農産物の最大の買い手であるがTPPによって他国に取られるかも知れない。一方、保険、薬品、医療機器、映画、野球放送などで、米国は日本というベストカスタマーを増やすことになる。「もう一つ大事なことは、TPPが太平洋の安全を促進することだ」とシーファー大使は強調する。「商人が国境を越えて行き来する時に、兵士は行き来しないことを思い出して欲しい」と語った。

• 最後にシーファー大使は「日米は共に世界をリードできる。だが忘れてはならないことは、繁栄だけでは安全は買えないと言うことだ。リーダーシップは義務を要求する。義務は犠牲を要求する。そのことを承知しておかなければならない。日米双方が責任を持たなければ、我々はより良い世界を期待することはできない」と述べ、「義務と犠牲は、それでも平和と繁栄を生み出すことができることを忘れてはならない」と語った


John Thomas Schieffer, Former Ambassador to Japan, speaks at the 86th annual dinner of the Japan America Society of Chicago.